社会保険 群馬支部への質問状
20.10.19
カテゴリ:医院ブログ
減圧のハードルが高くなってしまったのですが
先週、指示された方法で手術を行ってみました
皮膚を切り
骨を一旦外して手術を行い、その後、戻して終了します
時間は30分ほど余計にかかりました
皮膚を切り
骨を外し
時間が余計にかかるので身体への負担は増し
全身麻酔の時間も伸びるので、さらに患者さんの身体への負担は増えます
どこからどう考えてもオカシイ
だから社会保険の診療報酬支払基金に質問状を書かせていただきました
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社会保険診療報酬支払基金 群馬支部 ご担当
今回の通達について、疑問点があるので、質問にお答えいただけましたら幸いです。
日本の眼科8月号にこのような文章が載っています。これは日本眼科学会が診療報酬の審査会に出した通達です。
「甲状腺眼症に対する眼窩減圧術は、眼窩内腫瘍摘出術で算定する。その場合、手術方法が前眼部から眼窩内にアプローチする場合は〈K234 眼窩内腫瘍摘出術(表在性)〉で算定し、骨を処理し眼窩先端部付近までアプローチする場合(クレーンライン法等)は〈K235 眼窩内腫瘍摘出術(深在性)〉で算定する。」
しかし、群馬支部からこのような通達を頂きました。
「甲状腺眼症に対する眼窩減圧術は、K234眼窩内腫瘍摘出術(表在性)でご算定願います。また骨の処理(皮膚切開をして眼窩骨の一部を外し、手術終了時に戻す)を施行していない場合には、K235眼窩内腫瘍摘出術(深在性)は算定不可です。」(原文ママ)
質問1 日本眼科学会の通達では、「甲状腺眼症に対する眼窩減圧術を眼窩内腫瘍摘出術で算定する」と言及していますが、表在性か深在性かは分けていません。なぜ群馬支部では表在性で算定する、と限定してしまっているのでしょうか??これは日本眼科学会の通達から逸脱していませんでしょうか?
質問2 日本眼科学会の通達では「骨を処理し眼窩先端部付近までアプローチする場合(クレーンライン法等)は〈K235 眼窩内腫瘍摘出術(深在性)〉で算定する」と言及しています。当院で行っている術式は骨を処理していますし、眼窩先端部付近までアプローチしています。査定されることになった論拠をご明示いただけましたら幸いです。
どのアプローチでどの手術をするか、ということに制度としての制限を加えると、医療機関としては、その決定に応じて術式の選択をせざるを得ません。つまり今回の通達が固定された場合、皮膚切開して骨を外して戻すクレーンライン法でしか、減圧術を行うことが出来ません。これは患者負担の増大を患者に強いることになり、日本医師会も採択した患者の選択の自由をうたったリスボン宣言に反することだと思います。
リスボン宣言 一部抜粋(日本医師会HPより)
序文(一部抜粋)
法律、政府の措置、あるいは他のいかなる行政や慣例であろうとも、患者の権利を否定する場合には、医師はこの権利を保障ないし回復させる適切な手段を講じるべきである。
これに則り、患者の権利のために、質問書を書かせていただきました。
本文
1.良質の医療を受ける権利(一部抜粋)
a. すべての人は、差別なしに適切な医療を受ける権利を有する。
b. すべての患者は、いかなる外部干渉も受けずに自由に臨床上および倫理上の判断を行うことを認識している医師から治療を受ける権利を有する。
c. 患者は、常にその最善の利益に即して治療を受けるものとする。患者が受ける治療は、一般的に受け入れられた医学的原則に沿って行われるものとする。
2.選択の自由の権利(一部抜粋)
a. 患者は、民間、公的部門を問わず、担当の医師、病院、あるいは保健サービス機関を自由に選択し、また変更する権利を有する。
b. 患者はいかなる治療段階においても、他の医師の意見を求める権利を有する。
3.自己決定の権利(一部抜粋)
a. 患者は、自分自身に関わる自由な決定を行うための自己決定の権利を有する。医師は、患者に対してその決定のもたらす結果を知らせるものとする。
小切開で患者負担を少なくする試みは、医師それぞれの努力により行われてきました。医療技術の進歩によって、さまざま手術の侵襲が少なくなり、患者の回復も早くなっています。眼窩深部の脂肪減圧もその一つです。結膜切開から脂肪のみを切除することが出来ます。しかし現状ではこのような低侵襲の手術は、保険では認めていただけません。高い技術で低侵襲の手術を行っても、減額査定されてしまい、皮膚を切って骨を外すことをしなければなりません。こんなことは他科ではありえず、例えば胃の単純全摘は、K657 胃全摘術 1 単純全摘術50,920点ですが、腹腔鏡を使って小切開で行えば、K657-2 腹腔鏡下胃全摘術 1 単純全摘術64,740点となっており、むしろ小切開・低侵襲の方が点数高く設定されています。今回の眼窩減圧術に起きていることは、低侵襲に向かえば向かうほど点数が低くするということですので、そうなると昔の高侵襲のまま手術をすることを群馬支部が推奨しているという意味だと思います。(ちなみにクレーンライン医師がクレーンライン法を発表したのは1889年、大日本帝国憲法が公布された年です)
どうか、ご賢明なご判断を頂けますよう、お願い申し上げます。
医療法人 かしま眼科形成外科 理事長 鹿嶋友敬
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今後、支払基金とのやり取りは公表していきます
公表しないと、僕らみたいな末端の機関は、握り潰されて終了ですからね
患者さん達が声をあげてもらえないと、
究極的にはオキュロは閉院して、バセドウ病眼症治療は行いません、ということもあり得るのです
(というか今回の決定をした人たちは、そうなって欲しいと願っている)
皆さんの支持が必要です
どうぞよろしくお願いいたします
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2019年手術実績 3850件(2019年1-12月)
涙道涙液学会 理事
オキュロフェイシャルクリニック東京 中央区銀座1丁目ビル8F
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新前橋かしま眼科形成外科クリニック 前橋市古市町180-1
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