blog

ブログ

手術後に目が動かない眼窩骨折④

19.07.22

カテゴリ:医院ブログ

手術後に目が動かない眼窩骨折④

その難問とは、、、

以前も書きましたが、分厚い瘢痕組織がすでに出来上がってしまっていたのです。

一般の方々は瘢痕がどんなものか分からないと思います。
例えて言うならボンドのようなものです。

まさに接着剤のようなもの。

時間が経てばそれは白く硬い組織に変わっていきますが
2週間の時点ではボンド程度の硬さです。

骨片を除去した後でしなければならないことはそのボンドのような瘢痕組織を除去することでした。

骨が接触していた部分はすべて瘢痕に置き換わっています。
これまでの経験から瘢痕を除去しなければ眼球運動は戻らないということを知っていたため
目に見える瘢痕組織をすべて除去することにしました。

これが大変で。。。

手術で見える範囲(術野という)を広げていますが
例えて言うならズボンに手を突っ込んだだけのような視野しかありません。

そのなかでまき散らされたボンドのような瘢痕をすこしずつ切除していくのです。

少しずつ、少しずつ。

一番大事なのは下直筋の周囲の瘢痕がすべて除去されていることです。
下直筋の周辺を特に念入りに剥がしていきます。

瘢痕を切除すると、それまで動かなかった眼球が動くようになりました。
(Forced duction testによる)
ここまで来て初めて手術を終えることが出来たのです。

しかし。
術中にはかなり動くようになった実感がありましたが
術後2週間で来院されたときには眼球運動の改善はありませんでした。

あれだけ瘢痕を除去しても、眼球運動障害が治らない。

実は今までの経験上、眼窩組織が瘢痕化した症例で
眼球運動が正常化もしくは改善した症例を知りません。

間違った手術で眼窩を傷めてしまうと、もう元には戻れなくなってしまうのです。

今後、テクニックの発達で治せるようになるのかもしれませんが
現状では治すことが出来ない。

となると一番の予防策は瘢痕を作らないこと。

つまり、きちんと眼窩を理解しているドクターのところで
きちんとした初回手術を受ける
ということに尽きるのです。

最後に。

初回のバルーン手術を担当したドクターは
某大学の形成外科の元教授(!)でした。

肩書がすべてではないことがお分かりいただけたでしょうか?

例えホテルオークラの元総料理長だったとしても
フレンチから寿司からお好み焼きまで全てを高いレベルで知っているわけではないし
むしろ一つ一つを見たら、銀座のそれぞれの専門店より
レベルは低いに決まっているのです。

眼窩の取り扱いは、眼窩のことが分かっている医療機関へ。
これが大原則です。

※読んで勉強になったり、面白かったと感じたら、いいね!をお願いいたします!

2018年手術実績 3046件
群馬大学 眼科 非常勤講師
涙道涙液学会 理事

オキュロフェイシャルクリニック東京 中央区銀座1丁目ビル8F
03-5579-9995
http://www.oc-tokyo.com/

新前橋かしま眼科形成外科クリニック 前橋市古市町180-1
027-288-0224
http://www.kashima-oc.com/

バセドウ病眼症に悩んでいる方はどうぞ
「1時間で分かる 甲状腺眼症入門パンフレット」
https://oculofacial.page.link/pamphlet
kindle版
https://www.amazon.co.jp/dp/B07MS9HNSH/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_NJ8pCbV9B21VS